鼻かけ地蔵 (但馬の伝承話)
2018 年 12 月 22 日
家から久美浜苑までの間(城崎の町から円山川を隔てた向こう岸の楽々浦【ささうら】
という所)に、鼻かけ地蔵という変わったお地蔵さんが祀られています。
毎年6月の初めに鼻かけ地蔵尊という祭りがあり、護摩供養や、くじ引き、
餅配りなどをしますが、このお地蔵さんのお話です。
むかしむかし、楽々浦に、正直で働き者の漁師が住んどったそうな。
ある晩、この漁師の夢にお地蔵様が現れて、水の底から引き上げてくれと
頼んだそうな。
不思議なこともあるもんだと思いながら、いつも通り網を打って引き上げると、
これがなんと、夢にでてきた通りの石のお地蔵さんであったそうな。
漁師は、川のそばのたもとの木の下にそのお地蔵様をおまつりしたそうな。
ところが、そのお地蔵様の鼻から、ぽろぽろ、ぽろぽろとお米がこぼれ出るので、
どんどんお米がたまっとる。
漁師は喜んで、村の人たちにもお米を分け、お地蔵様を大切にお守りしとった。
ところが、欲にはきりのないもんで、漁師は、ぽろぽろ、ぽろぽろと出てくる
米を見ているうちに、これがぽろぽろでなくザァーッと出るようになれば、
働かんでもよいのにと考えるようになった。
そして、とうとう、ある日、お地蔵様の鼻の穴を大きくしようとしたんだな。
ところが、手もとが狂って、お地蔵様の鼻をのみでかいてしまった。
「しまった。」と思った時はもう遅い。鼻のかけたお地蔵様からは、
もう、一粒のお米も出んようになったそうな。
それでも、このお地蔵様には、ひとつだけお願いごとをすると、
その願いをかなえてくださるそうな。
おしまい